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やばい。
めちゃくちゃ、心臓がドキドキする。
何も言えずにただ見つめていると、先生は呆れた顔で俺を見返す。
「春山。お前なに顔赤らめてんの?物欲しそうな顔しやがって。俺に襲って欲しいのか?」
「ーーーーッ!」
いきなり投げつけられた不躾な言葉に、全身がさらにカッと熱くなる。
「なっ、なんだよ、物欲しそうな顔って!してないそんなの!」
「はいはい、うるせぇ声だな、お前は」
大声で怒鳴る俺を鬱陶しそうに見つめながら、右手をポケットから取り出し頭をボリボリと掻く。
そんな仕草は気怠げという言葉そのものだ。
「……先生、あんまりコイツからかわないで下さい。精神年齢お子ちゃまなんだから」
顔を真っ赤にしている俺の隣で、冷えた声と目付きの玲二が溜息交じりに言葉を吐く。
何か言わなきゃいけないような気がして、俺はよく考えもせずにとりあえずうんうんと首を縦に振った。
「そ、そうだよ!変なからかい方っ……て、おい!?精神年齢お子ちゃまってなに!?」
「あ、ごめん。年齢ちゃんと言った方が良かった?十一歳ぐらい?」
「何それすっげー微妙!!変にリアル!!」
ぎゃあぎゃあ吠える俺をサラリと流す玲二は、そのまま再び視線を先生に向ける。
「てことなので、先生。セクハラはほどほどに」
釘を刺すようにハッキリと喋る玲二に、先生は肩をすくめながら眉を少しだけ寄せて見せる。
「じゃあ世田、お前が相手してくれる?」
ヘラリと笑うその顔は、楽しそうで意地が悪くて。
はぁ?と苛立たし気に呟く玲二の隣で、
「お、おっ……俺が相手するし!!」
そう無意識の内に叫んでしまったものだから。
二人の丸く点になった目が、射抜くように同時に俺を見つめた。
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