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な。
何言ってんの、俺。
「……………………………なぁんちゃって、はは」
苦し紛れに漏れた言葉が、さらに自分の首を絞める。
呆れ切った視線を投げかけて来る玲二の隣で、俺は無表情に見つめて来る先生から目が離せなかった。
顔を真っ赤にしながら唇をキュッと噛み締めていると、先生は一歩俺に近付きグッと腰を折り曲げた。
かなりあった身長の差が一気に縮まり、目の前に先生のどアップが来る。
「…………へぇ?じゃあ、さっそく手解きしてもらうかな?」
て。
てほどき?
ニヤリと不敵に微笑んだ顔が、更に近付く。
それはもう、かなり。
え?
とか、
は!?
とか。
心の中ではテンパって訳が分からない状態なのに、何故か体はがんじがらめになったように動けない。
「キスしちゃおっかな~?」
き。
キス?
一瞬単語の意味を理解出来ず、さらに目が点になってしまう。
「奥まで舌入れて、息が出来ねーくらい深~いやつしてやろうか?ん?」
した?
いれる??
もう。
結構な最初からキャパオーバーだったんだ。
先生の声が全く届いて来ない。
えーと。
えー、と。
「ーーーーいい加減にしろ、この変態教師」
何故か俺の後頭部をバシッと叩いた玲二が、そのまま肩をつかんで俺を引き寄せる。
「コイツで遊ばないで下さい」
遊ぶ。
あぁ。
俺、遊ばれたんだ。
少しだけ動き出した頭で考えながらぼんやりと先生を見ると、ニヤリと楽しそうに笑っていて。
そうか。
遊ばれたんだ。
再度そう心の中で繰り返して。
なんだ。
なぁんだ。
そりゃ、そうか。
なんて。
ひどく納得しながら、こっそり一人で傷付いていた。
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