錦戸潤・1

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「錦戸先輩って本当、サッカー上手いっすよね!」 部活が終わり運動場を整備し終えた一年が、部室に戻った瞬間俺の元へやって来た。 キラキラと目を輝かせながら「憧れています!」と前面に押し出しているその顔に、チラリとだけ視線を送る。 「俺、先輩を目指して頑張ります!!」 それだけ言い残し、その生徒はサッサと自分のロッカーに歩いて行ってしまった。 まだ、何も答えてない自分。 答えようともしていない、自分。 皆もう分かっている。 俺の反応がやたらと薄くて、ほとんど喋らないということを。 分かっているから、言いたいことだけを言い切りすぐにどこかへ行ってしまう。 それが、とにかく、楽だ。 話す気力が湧かないのは、昔から。 誰にも興味を持てないのも、昔から。 …………ぁ。 でも。 今は、一人だけ。 たった一人だけ、ほんの少し気になる人がいる。 そうだ。 今日は、月曜日だった。
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