春山修斗・1

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「あ、先輩達だ」 玲二がそう呟いたのは、俺がラーメンを半分近くまで食べた時だった。 ちゅるちゅると麺を一本吸い上げながら、玲二の見る視線の先へ視界を移す。 隣のテーブルの端に座っている三、四人の姿を確認し、その中の一人を見た瞬間一気に気持ちが沈んでしまう。 錦戸潤(にしきどじゅん)。 二年生にして、我がサッカー部のエースストライカー。 サラサラの茶色い髪に少しだけ目が隠れているが、その顔はいつも無表情に整っている。 あまり笑わない先輩はあまり喋る事もなくて、なんていうか本当に不思議な感じだ。 黙っているのに存在感があって、無表情だけど嫌味には見えず、なんだか彫刻のよう。 綺麗な綺麗な顔をした人形がいるような。 そんな、雰囲気。 「どうしたの修斗?」 不思議そうな玲二に声をかけられ、ハッと我に返る。 慌てて続きを食べながら、何でもない!と首を横に振った。 錦戸潤。 サッカー部のエースストライカーで、イケメン。 そして。 天堂先生の、特別な、人。
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