プロローグ 

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 シャロン・ ファリス・ロンド・フィリップ侯爵は、二年前に父親の急逝により爵位を受け継いだ。  青い薔薇を愛でるフィリップ前侯爵は世間体や格式を重んじる傾向が強かった。  侯爵の世継ぎとして誕生したシャロンは生まれつき身体的な秘密があった。  異質な存在は当時、大陸にはびこっていた熱病や凶作、飢饉などの災害から 人々の心の闇が創りだした魔女を連想するものであり、それが侯爵の長子に現れたとなれば由々しき事態に成りうると前侯爵は考えた。  そのことから、シャロンは誕生以来、フィリップ侯爵の本邸とは離れた別邸バレンシア薔薇荘園屋敷に幽閉され青年期までを過ごした。  フィリップ前侯爵の急逝により、シャロンは何も知らないままに爵位を受け取り、莫大な富と自由を手に入れることとなった。  それが二年前のこと。  以降シャロンは“ 特異な身体的特徴 ”をひた隠しにしながら、フィリップ侯爵としての務めを果たしていた。  定期的なパーティーの開催もその中の一つ。  近隣諸国の著名な貴族、成功した商家、主に上位の爵位を持つ者らは、ダンスパーティーを名目にパトロン探しや悦楽に勤しむものだ。
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