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「葵さん、どうした?」
スマホのアルバムに、あの夜の一部始終が残されていた。
それを再生することはしないまま、
「……岩田くんの悪趣味って?」
兄である岸島さんに、人間性のよくわからない鬼畜の事を尋ねた。
「弟ながら、こんな話するの恥ずかしいんだけど、
アイツは、女に苦痛を与えるのが好きなんだよ。
そして、お金にだらしない。
もしかして、財布からお金抜かれてなかった?」
最低、ほんとに最低。
「気付かなかったです」
そんなに財布にお金入れてないし、カード類は一切ない。
「そうか、なら良いけど、何か気づいたら何でもいいから連絡ちょうだいね、あ、そして、これ、夜に突然来たお詫び」
青ざめたままの私に、
岸島さんは黒焼酎らしきものを手渡す。
「あ、ありがとうございます」
「葵さん、結構イケる口みたいだったから。
じゃ、お邪魔しました、おやすみ」
何だか、高級そうな包みに入った焼酎。
こんなの貰ったの初めてだ。
本当に紳士的。
玄関だけでやりとりして悪かったかも。
パタン……と閉まる音で、ハッと嫌な現実を思いだし、
恐る恐る、いつのまにか録画されていた動画を再生する。
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