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3ヵ月目に入った頃だっただろうか。 そろそろ金も底をつきそうになった頃だったと思う。 その日は来店するのが遅くなり珍しく閉店近くまで居座っていた。 他の客が居なくなった頃、いつものように“試作品”を出してもらった時。 「よく続くね」 いつもとは少し違う口調で話しかけられ驚いて顔を上げた。 「もう3ヵ月も。しかも毎日」 クスクスと笑って話を続ける。 「俺も呑んでも?」 「あ…あぁ…どうぞ」 透明なグラスに透ける琥珀色の液体は妙に似合っていて。 「君もしつこいねぇ~」 「すみません。諦めきれなくて」 ははっと笑って答えることしか出来なかった。 「ウエイターとしてなら雇ってもいいよ」
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