帰郷

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バスが来てそれに乗り込んだ俺達は、固まって席に座って話をしていた。 乗客は俺たち以外には、老夫婦くらいしかいない。 「それにしても野郎ばっかかよ。なあ直人、なんで女子は皆高校に行かねえんだよ。おかげでバスの中が退屈でたまんねえよ」 哲也が言ったその言葉に、俺は首を傾げた。 確かに……当時は女子が誰も高校に行かないと聞いても、自分の進学の事で必死で、不思議だと思う余裕がなかった。 それが今になって不思議に思う。 「んー……詳しくは知らないけど、二日後に儀式があるでしょ?その儀式の巫女になる為に、外に出さずに谷で過ごさせてるって、爺ちゃんから聞いた事があるけど」 「ふーん。どうでも良いけどよ、そんな事で健全な男子の楽しみを奪うんじゃねえよな」 源太と勝浩に同意を求めるけど、二人とも苦笑いを浮かべて軽く流している。 谷の女子は全員進学しない……か。 それを聞いて思い浮かべたのは……源太達と同級生の麻里絵の顔。 中学生の頃付き合っていて、俺が高校進学の時に別れてそれっきり。 手を繋ぐくらいの、幼い付き合いだったけど。 過去に何度か谷に帰っても、何だか気まずくて一度も会っていなかった。
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