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今日はヤマトが深夜まで製作していたため、帰りが遅くなった。バイクで通勤しているので終電の心配は要らないが、ヤマトに迫られたり、香曽我部に口説かれたりと余計なことに翻弄され心労もピークに達していた。
こんなときは愛車であるビッグバイクの重みがいつもよりズシリと腰にのしかかる。やっとの思いで歩道に駐輪し、ごついチェーンでガードレールとホイルを繋げは、我が家に到着だ。
「長谷川さん。おかえり、遅かったね」
「うん…ごめん」
「なに謝ってんの。仕事でしょ。ただいまは? 」
「ただいま…」
「もしかして…すっごい疲れてる? シャワー浴びてきなよ、なんか軽い食事作っとくから」
「貴弘が食べたい」
「俺? なに、どうしたの」
「なぁ…貴弘は俺を食べたくないのか? 」
「長谷川さんちょっと変だよ。なんかあった? 」
「…あったよ。大有りだよ。…もう疲れちゃったよ」
本当に疲労困憊だった。人に好かれるのは良いことだと思うが、欲求の対象にされるのは、それだけで心身が疲れてしまう。
長谷川にしては珍しい泣き言だった。
「お風呂入れようか? それとも一緒にシャワー浴びる? 洗ってあげるよ長谷川さんの全部」
優しい恋人の声に、長谷川は思わず両手を伸ばした。腕を首に巻きつけると、屈んでいた恋人がひょいと長谷川を横抱きにする。
「洗って…貴弘」
「はい。了解」
熱いシャワーで全身を温め湯気がバスルームの温度を上げる。
大人しくシャンプーされていると、恋人が控えめに口を開く。
「初めてだね、こんなふうに甘えてくれるの」
「………」
「嬉しいよ。俺。ちゃんと長谷川さんのパートナーになれた実感が湧いてきた」
「実感? 」
「うん。俺たちふたりとも働いてるわけだけど、家賃は長谷川さんの持ち家だから払ってないでしょ? 家事分担って言っても料理はほとんど長谷川さん任せだしさ。俺は洗い物とゴミ出しくらい? 掃除洗濯は一応やるけど、でも長谷川さんの方が手際が良いし。なんか居候に毛が生えたようなモンだなって思ってた」
「そんなこと…」
「長谷川さん俺の愚痴は聞いてくれるのに、自分の愚痴はいわないでしょう。俺じゃ力不足なのかなって」
「そんなことないよ…いつだってオマエは俺のこと甘やかしてくれたから」
「ベッドの上で? 」
「…だけじゃなくて。…真面目に言ってるのに」
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