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「俺も真面目に言ってる。ホントに…ベッドの上でしか役に立てない男なのかなって」
「バカ」
「ひどっ」
「バカバカっ。早くシャンプー流せよっ」
シャンプーを一通り流して髪を掻きあげると、恋人の逞しい胸に手の平をあてた。
「俺が料理つくることと、オマエがこの胸に俺を抱きしめてくれることは、一緒だよ。同じ『愛情』だよ。表現の仕方が違うだけだ」
長谷川はその整った顔立ちで、色の濃い虹彩の瞳で、恋人をみつめながら話し続ける。
「多少の愚痴なんて、オマエに抱かれたら消し飛んじゃうんだよ。…好きなんだ。大好きなんだ。誰にも渡したくない。こんなに想ってるのに、今更 『実感できた』 なんて言うなよ」
「表現の仕方…か。アーティストらしい言い方だね」
タオルをボディソープで泡立てていた恋人は、落ち着いて、と言いたそうに長谷川の背中を洗い始め、柔らかい石鹸の香りに長谷川の表情も和らぐ。
「ごめん…」
「いいよ。学校でなんかあったんでしょ。話したいなら聞くし、言いたくないなら聞かない。それにベッドで少しでも気が済むなら、とびきり甘やかしてあげる」
恋人は背中を洗い終え長谷川の前に回りこみ首から胸へと手際よく洗い始めた。
「じゃあ…甘やかして。俺が何も考えられなくなるくらい、感じさせて、オマエを」
「…っ。…長谷川さん、いま煽るのやめて。俺も我慢してるんだから」
「…ホントだ」
長谷川はソレに気付きクスリと笑う。
この後たっぷりと時間をかけて文字通りとびきり甘やかされた長谷川は、心地好く深い眠りについた。
身体の奥に残る疼きに、まだそこに愛しい恋人がいるようで嬉しかった。
「やっと追いついてきたみたいだな」
「深夜まで何日もつき合わせてしまってすみませんでした」
「いーよ。ヤマト。良い作品になってきたじゃないか」
若々しい少年の像だった。まだ細かい部分は仕上がっていなかったが、像から良い雰囲気が漂っているのが見て取れた。
「これブーメラン投げた瞬間なんです」
「ブーメラン? あぁ。なるほど」
右手を斜め上に上げたその角度はまさしくブーメランを投げた瞬間のポーズだ。まだ大雑把な肉付きだが表情も、楽しさと、期待そしてちょっとしたスリルを感じさせる微妙なもので、やはり繊細な表現に長けたセンスのある学生だと、長谷川は思った。
「また…ブーメランみたいに帰ってきたいなと思って。ココに」
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