第一章:瀬尾誠

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「フフ……部長もなんだかんだ理由をつけて怖いだけなんでしょう? テントなんて張れなくても寝袋を持っていけばいいだけじゃない。 それに最後のキャンプ地なんだから、私にも決定権があってもいいでしょう? まっ、いいわ……私、疲れたから帰る。 狭い部室で埃を吸って気分が悪くなったみたい」 岩田さんはそう言ってカバンを肩に掛け、部室から出て行った。 5人になった部室内に気まずい空気が流れる。 「た……達也!岩田さんの言う事なんて気にしたらダメだよ!」 笑窪を出してニコッと微笑んだしのぶは、達也の顔を覗き込む。 達也は唇を噛みしめながら、「帰るわ」と一言呟き出て行った。 「あっ、ちょっと待ってよ! 何をそんなにキレてんのよ!! ごめん……鈴、清一郎先輩、部長!私、ちょっと落ち着かせてきますね」 しのぶは食べかけのお菓子を口に押し込み、達也を追いかけて行った。
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