第一章:瀬尾誠

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「どうした?忘れ物か?」 俺は清一郎の座っていた場所に視線を送りながら問い掛ける。 「いや、しのぶさんの事なんだけどね……。 誠、気付いてると思うけど、彼女もお前の事が好きだよ。 だから、鈴さんとは内緒で付き合ってるんだろ?」 清一郎の言葉に鈴が目を丸くして停止する。 「えっ、もしかして鈴さん知らなかった? しのぶさんと友達だから、てっきり知ってるもんだと思ってたよ。 彼女、誠を見る表情だけいつも女の目になってたからさ。 ごめんね、僕……そういうの敏感で。 それじゃあ、帰るね」 爆弾発言だけを残して去って行く清一郎。 鈴は目に涙を溜めて俺を問い詰める。 「もしかして、しのぶの気持ちを知ってて私にモーション掛けてたの?」 「ハッキリと好きとは言われてない。 好意があるような素振りはたまにして来てたけど、俺は達也がしのぶの事を好きなのも知ってるし、何より鈴の事が好きだったから……」 「もういいよ。 付き合っていることを2人だけの秘密にしようって言った意味が今日解った。 それに、前々から思ってたけど、私と同じようにしのぶって呼び捨てにしてるのも嫌だった!彼女でも無いのに」 鈴は眉間に皺を寄せながら俺にそう告げ、部室から飛び出した。
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