第一章:瀬尾誠

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「ちょっ……鈴!待ってくれ!」 俺は慌ててカバンを背負い、部室の鍵を閉めて追いかけていく。 校舎を出てしばらく走っていると、ベンチの並ぶ中庭を足早に横切る鈴の背中が見えた。 「鈴!!とりあえず止まってくれ……」 そう言って俺は鈴の手首を掴んで振り返らせる。 「離して!私もう……誠の事信じられない」 「頼むから、落ち着いて話を聞いてくれって!」 「もういいってば!」 鈴は腕を振りほどいて走り出した。 俺は鈴の目の前に回り込む。 「信じてくれ、俺は鈴しか見ていない」 俺はそう言って抱き寄せ、何かを言おうとしている鈴の唇にキスをした。 下校する生徒の視線など気にしていられない。 ただ、鈴の気持ちを繋ぎ止める事に必死だった。 だから気づけなかったんだ。 近くのベンチに腰を下ろしていた達也としのぶが、俺と鈴をジッと見ていた事にーーーー
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