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「ちょっ……鈴!待ってくれ!」
俺は慌ててカバンを背負い、部室の鍵を閉めて追いかけていく。
校舎を出てしばらく走っていると、ベンチの並ぶ中庭を足早に横切る鈴の背中が見えた。
「鈴!!とりあえず止まってくれ……」
そう言って俺は鈴の手首を掴んで振り返らせる。
「離して!私もう……誠の事信じられない」
「頼むから、落ち着いて話を聞いてくれって!」
「もういいってば!」
鈴は腕を振りほどいて走り出した。
俺は鈴の目の前に回り込む。
「信じてくれ、俺は鈴しか見ていない」
俺はそう言って抱き寄せ、何かを言おうとしている鈴の唇にキスをした。
下校する生徒の視線など気にしていられない。
ただ、鈴の気持ちを繋ぎ止める事に必死だった。
だから気づけなかったんだ。
近くのベンチに腰を下ろしていた達也としのぶが、俺と鈴をジッと見ていた事にーーーー
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