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「あー…じゃあ、お願い。」
美優はそう答えて、弁当を片手で優の方へと押しやった。
「…えっ?」
その瞬間、包まれた体。
優はカウンター越しに美優を抱き締めていた。
「ぁ……」
(名前)は理解する事ができず、硬直していた。
どれくらいの時間がたった
か…
「_____…温まりました?」
妖艶な笑みを浮かべながら、(名前)の耳元で囁く優。
びくり、と体を震わせ我に返った(名前)はどんどん顔を赤に染め上げていく。
「なっ!!温めるって…弁当のことじゃ…っ?!」
「寒そうでしたので、先輩のことを温め様と思って。」
キッ、と鋭く優を睨み付ける美優。
そんな美優を、余裕の表情で見下ろすと、続けて言う。
「先輩は馬鹿ですね、僕がいつ弁当を温めるといいました?」
怒りか、羞恥か…
一層、顔を染めあげる。
カウンターに置いてあった冷たい弁当を乱暴に手にとると優に背を向けた。
「あ、先輩お釣り。」
「いらないっ!!馬鹿!」
美優は振り返る事はせず、出て行った。
訪れる静寂。
「(……行っちゃった)」
優はガラスの向こうに目をやる。
しんしんと、真っ白な雪が積もり始めていた。
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