序章

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この世界は広い。 未知なる大地、未知なる国、未知なる人々。 海の果ては未だ知れず、夢見る者は数多い。 世の浪漫は未だ尽きず、総ては神秘に包まれている。 そんな世界の東の端。 周辺の国からは『龍の国』と呼ばれる、知る人ぞ知る龍が守護する国がある。 『龍の国』は水の都。緑が大地を覆う自然豊かな青き国。 その国は、龍に選ばれた【龍】の【真名】を持つ者が王となり、国を治めている。 龍に選ばれた者は、【巫女】に見出され、龍に【真名】を与えられ、【無】から【龍】の王となる。 【真名】とは即ち魂の名。己が本質、魂が定め。 肉体に付けられる名とは違い、古より魂に付けられし固有のモノ。 輪廻転生の中でも変わらない根本、自分自身、自分だけの力。 其れは、言わば運命。生まれ落ちた時から人々が背負っている宿命。 この世は真名によって秩序を保ち、世界の意思は真名に託される。 これは、真名が支配する世界において紡がれた、ほんの些細な歴史のひと欠片である――
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