忘れていいけど、忘れない

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  あたしのもので汚れた指を、 拓海さんはおもむろに 咥えて舐め始める。 赤い舌を覗かせながら、 拓海さんはあたしに視線を流してきた。 「直接やることもあるのに、 何を今さら」 「……ッ」 ……なんて人だろう。 そして、なんでこんな人のこと、 好きなんだろう。 「志緒」 拓海さんは気が済んだのか、 あたしの頭をそっと抱き寄せる。 逆らわずにじっとしていると、 彼は耳元でささやいた。 「……仕切り直そうか?」 「……」 ああ、こうやってまた自分から 甘ったるく犯されるんだ、あたしは。 そんなバカな自分のことを、 決して嫌いじゃなかった。 .
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