忘れていいけど、忘れない

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  舌で舐め上げたまま、 見せつけるように TAKUMIは顔を上げる。 そのアイスグレーの瞳と 目が合ってしまって、 ズキンと動けなくなった。 心臓から、頭と下肢に同時に 電流が放たれたようで。 浅い呼吸越しに しばらく見つめ合ってから、 腰と頭をぎゅっと抱き寄せられた。 TAKUMIはまたあたしの口唇を塞ぐ。 ちゅる……と舌が口内に 出入りする音が聴こえて、 耳の中がクラクラした。 口腔のその浅い抽挿は、 否が応でも別のことを 思い起こさせる。 あたしの頭の中で 何が起きているかなんてすべて判って、 やっている。 TAKUMIはそういう人だ。 .
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