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「ああ、はい。一度戻って来られてから車で帰られましたよ」
一瀬さんにそれとなく聞いてみたら、そう教えてくれた。
だったらなんで車で送ってくれなかったんだろう。
車なら駅まで三分くらいだし、昨日は降られはしなかったけど、雨の心配もあったのに。
もしかして、私と話をするためだけに?
そう穿った見方をして、むっと眉を顰めたら。
「信也くんなりに、気を使ったんじゃないでしょうか」
考え込む私にマスターがコーヒー豆の袋の整理をしながら言った。
「……車という空間は、ある意味密室ですから。怖がらせないように、とか」
「え」
「結構、気遣い屋さんですよ、彼は」
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