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【夢乃はよろしくする様です】
これは、月星学園内での、とある午前中のお話。
焦げ茶色の髪を二つに縛り、どこか憂いを浮かべる表情をした少女、七橋夢乃は、
一人でも多くの人間達を、この目に是非とも修めたいと言う、一歩間違えれば邪かつ不純な理由で、今日も元気に学園に登校して来ていた。
そんな夢乃は、二時限目の授業を終わらせた直後に、二冊程度の分厚い本を両手で抱える様に持ちながら、教室から出て行き
たった今、図書室に入ったばかりだった。
「…この本は。大分参考になったな」
新聞部に所属する夢乃は、学園内での新聞を書く為、様々な情報を必要とする。
例えば、それが人間についてならば、彼女は目を輝かせながら情報収集するだろう。
夢乃が持って来た本は、その新聞作りの参考となる資料として、図書室から借りてきた本だった。
「よっと…」
比較的、他の中等部一年生女子よりも背が低い夢乃は
図書室に長机とセットでズラリと並んである椅子の一つを台にして使い、
二冊の本を、高い位置にあった棚の、本の大きさと丁度ピッタリと合う隙間に押し込み
そして、微笑んだ。
「今回の新聞は。良いのが書けそう…」
呟きながら、夢乃はふと今自分がいる場所を教えてくれた人の事を思い出す。
緑のグラデーションがかった髪に、水色の澄んだ瞳を持った、彼女の事を。
「…あの人にお礼。言わなきゃな。」
――この場所を教えてくれた、あの人に。
そう言うと、夢乃の表情は元の憂いげなものに戻る。
椅子から降りて、それを元あった場所に戻すと、夢乃自身も自らの教室に戻ろうと、図書室の入り口兼ね出口の前まで歩いて行き
ドアの取っ手を掴み、ガラリと開けてから退室した。
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