20人が本棚に入れています
本棚に追加
時は流れて…
2019年5月7日のことであった。
まんのう町吉野下にあるダンナ(以降、章平さんのことはダンナと記載します。)とアタシとふたりの連れ子が暮らしている大きめの一戸建ての家にて…
朝のダイニングのテーブルの上には、ツナサンド・コンソメスープ・スクランブルエッグ・グリーンサラダなどが並んでいた。
いつも通りの朝の食卓の風景だけど、家族はみな交わす言葉もなく静かに食事をしていた。
最初の1ヶ月は、家族みんながいろんなお話をしていたけど、ここ数日は家族間で目だった会話はなかった。
朝ごはんを食べ終えたじゅんきくんとあいこちゃんは、大学と短大に登校した。
「行ってきまーす。」
「行ってきまーす。」
「気を付けてね。」
じゅんきくんとあいこちゃんを見送った後、アタシはダイニングに戻って、食器の後片付けをしていた。
読みかけの四国新聞をヒザの上に置いたダンナは、アタシにこう言うた。
「とし子。」
「なあに?」
「オレ、今夜は工場長のお供で接待があるから…帰りは遅くなる。」
「ごはんは?」
「いい…オレ、そろそろ行く…」
ダンナは、いすの上に置かれていた手提げカバンを手にしたあと、工場に出勤した。
ダンナを見送ったアタシは、食器の後片付けを始めた。
5月7日の朝までは何事もなく家族がおだやかに過ごしていたけど、この日の夜を境にして家庭内の人間関係が少しずつおかしくなっていた。
しかも…
アタシは、深夜に響いた恐ろしい声のことをダンナにきちんと話さないといけないのに、それを放置していた。
この時から、家庭内はより深刻になっていた。
最初のコメントを投稿しよう!