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署に戻ると、すれ違う刑事達が「お疲れ様です!」と声をかけてくる。
テキトーに「お疲れ」と返しつつ、俺はおそらく『妹』の取り調べをしているであろう取調室に向かった。
「お疲れ様です!」
取調室の前に来ると、そこに立っていた刑事も挨拶をしてきた。
「おう。どうだ?『妹』の方は」
「それが、さっきから何も話してくれないみたいなんです」
――おいおい。自首しといてそれか。
そう考えながら、俺は取調室のドアをノックした。中からは先輩刑事が出てきた。
「先輩、お疲れ様です。何も話してくれないそうですね?」
俺がそう聞くと、先輩は「おう」と少々呆れ気味に言った。
「自首してきたっつーから取り調べもベラベラ話してくれるだろうと思ってたんだけどな……。全然駄目だ。なんも話さねえ」
「俺変わりましょうか?」
俺がそう言うと、先輩は「頼むわ」と残してその場を去った。
俺は取調室の中に入りドアを閉める。
――長い黒髪の少女。身長はやや高め。細身で紫縁の眼鏡をかけていた。学校内じゃ結構な美人と噂されていたであろう。
少女はドアの音が聞こえたのかこちらをじっと見ている。
俺は「どうも」と軽く挨拶をすると、彼女の前に用意されていた椅子に座った。
「聞いたぞ。何にも話してくれないんだって? でも自首してきたってことはちゃんと話してくれる気はあるって事なんだよな?」
おそらく返答はないだろうと思いつつ、俺はそう言った。
だが――意外にも返答はあった。
「……あの刑事さん」
「ん?」
「あの刑事さん、なんか嫌だった。だから話したくなかっただけ」
うわ、これ先輩聞いてたら結構傷ついてたパターンだわ。
そう思いながら、俺は「そっか」と返事をした。
「だってあの刑事さん、弟か妹がいるって顔だったもん。そんなの被害者である姉の味方をするに決まってるわ」
「すげー……お前パッと見ただけでそんなことまで分かんの?」
俺は素直に感心した。
実際にあの先輩には二つ下の弟がいた為である。俺も何回か会った事あったから知っている。
――しかし、パッと見ただけでそんな事が分かってしまうとは。
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