FAIRY LAND 最終章

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「とにかく、これから春澪には性別変化のコントロールをマスターしてもらわないと困る。女学校の中で男に変わったら厄介だからな。」 事を説明して、この場で出来る魔力抑制法を教える。 「俺は詳しい事は分からないが、性別変化には何らかの心境変化がある筈だ。だから、春澪は男に見惚れていれば女に、女に見惚れていれば男になる訳だ………とにかく。」 澪都は春澪の左腕に触れて詠唱を唱える。 「俺に出来るのは、俺の回路を移植して、俺の精神を春澪に埋め込む。んで、内側からコントロールするから変な気分になるかもしれないが、そればっかりは我慢してくれ。」 「でも、春澪ちゃんって何で澪都様の所に来たの?」 精神集中してる時に雪野が疑問言葉を入れる。 「澪都さんは僕の命の恩人なんです。海外に居た時に海に溺れた僕を助けてくれたし、怪しい奴等に絡まれた時も助けてくれました。」 「―――――へぇ~。」 何で全員が意外だ。何て顔してるんだよ。俺でもそれくらいの善行はやるんだけど、正直、かなり心外だ。 「それから、ずっと一緒に行動してたんだけど、澪都さんだけ日本に帰国しちゃったんです。」 「それで、澪都を追う為に来たって訳や。何やオチビ、結構、根性あるやないか。」 林檎はベタ褒め、それよりも周りがうるさくて集中出来ないんですが………? 「う………ん。良し、こんな所かな?即興の魔法にしては上々だな。後は春澪の頭の良さに期待しよう。」 澪都は玉のような汗を服で拭いながら、その場に倒れた。さすがに強制的に回路を開いて、普段使う筈の無い魔法はやはり大変だ。 「うん、ありがとう澪都さん。それでは行って来ます。」 と、春澪は元気に女学校に向かって行った。澪都は眼を瞑ったまま、少しの間は静かにしていた。 「春澪ちゃん、大丈夫かしら?」 佳苗は春澪の事を見送っていたが、澪都が答えを伝える。 「大丈夫だろ、俺の精神も入れたから戦闘能力は上がってるし、危険になったら俺が行けるように転移魔法の印を埋め込んであるから………。」 「あら、澪都様って、やる事が早いんですね。」 「仕方無いだろ。この世界は危ないんだから、これくらいは常識だ。」 「何か澪都様、お父さんって感じです。」 まっ、過保護にしてる時もあるから否定出来ないな。 「勘弁。それにアイツは少し危険な奴だ。監視も込めて、俺の精神を埋め込んだ。」 その言葉の意味を知るのは今から半日後だった。
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