2552人が本棚に入れています
本棚に追加
/274ページ
結局、女学校の編入試験を軽くパスして、他の先生に女学校の中を案内されていた。
「そう………理事長先生のお知り合いの方ですか。それなら心配しなくても大丈夫ですよ。理事長先生は良く見回りに来たりしますし、少し過保護な所もありますから、優しく見守ってくれます………。」
あの時に比べたら、澪都さんの変貌には驚かされる事だらけだった。
残虐と殺戮を好み、血を見るのが好きだったのが13年前、今じゃ面影すらないが、大人しくなったのは僕が血を怖がった時だ。澪都さんは僕を優しく抱き締めてくれた。
『怖くないよ。』
と言う言葉を伝えた。それ以来、澪都さんは暗殺者を引退して、日本に帰国した。
一緒に居続ければ、また血を見てしまうからと言う理由で………。
「春澪さん?」
と、先生の声で僕の意識は現実に引き戻された。場所は家庭科室、今は授業中で料理の最中だ………。
「あっ、先生おはようございます。今日はどちらの用でいらっしゃったんですか?」
生徒が先生に視線を向けた瞬間―――。
「痛っ!!」
持っていた包丁で指先を少し斬ってしまったのだ。少量の血が指を伝い、下に落ちる。
――――――――――――――――――――――――――――――ポツン。
「!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
血の気が無くなる。身体全体が痙攣して、脳が沸騰しそうなくらい熱くなって、思考は真っ白になる―――そして、あの時の記憶が再び戻って来る。
「!!―――春澪。」
澪都は春澪の精神異常を察知して、早めに空間転移の魔法が作動する。
「いやああああああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
自我の崩壊、右も左も分からない世界。僕の全てが壊れそうになった瞬間―――。
「大丈夫だ。俺がここに居るから安心しろ。大丈夫、大丈夫だから………。」
優しい声の人が僕を抱き締めてくれた。温かく、懐かしい感じだった―――。
「転移………開始。」
光が僕を包み、眼を開けた時に飛び込んで来たのは青い世界だった。
「大丈夫か、春澪?」
優しい声の主は澪都さんだった。膝枕をしてもらってベンチに横になっている。
「お前がサポートになったのは血を見るのが怖い為だろ?学校で血を見るのは当たり前だし、ここは剣士や魔術師が集まる場所なんだから。」
澪都さんの言葉は今の僕には、あまり聞こえなかった。
最初のコメントを投稿しよう!