2552人が本棚に入れています
本棚に追加
微弱な魔力を美月町に張り巡らせてフラウロスの居場所をサーチする。
自身を蝕んでいる呪いの事など二の次になった。とにかく今は澪都の目的を邪魔するフラウロスを懲らしめる事しか考えていなかった。
「―――見つけた。」
ここから少し離れた美月港にある使わなくなった古い倉庫の中に澪都が嫌う女の気配を感じる。
「前の事を怨んでいるとは、よほど腹黒い女なんだろうな。悪霊まで使って呪うってんだから、尚の事、タチが悪いな………。」
呆れたかのような笑いをしながらも、右手には紅龍が握られている。澪都が幻想のみで造り出した紅い刀、能力は刀としての能力だけだが、茜のように属性変化を使えば、振るうだけで炎を出したり、持ち主に呪いを無効化させるなどのかなり戦闘では有利な能力がある。
しかし、その能力次第では変化させる時の魔力消費に違いが生じるが、今の澪都には差ほど影響は無い。
「あぁ、かったりぃ………。」
倉庫の中に入ったが、一瞬で溜め息が出た。何と言うかフラウロスの腹黒さがそのまんま表現されているようだった。
入った瞬間、強烈な魔力吸収の結界、それは澪都にも影響を与える。
そして、倉庫の奥には派手な服を身に纏い、やたらと美人なフラウロスが立っていた。
「あら?誰かと思ったら、私を封じ込めたボウヤじゃないの?こんな時間にここへ来るなんて、私のラブレターは届いたのかしら?」
相変わらず、嫌味な女だと改めて確認した後、まずは礼儀正しく挨拶をする。
「確かにアンタのラブレターは届いたみたいだぞ。胸糞悪くなる嫌なラブレターだったけど………。」
珍しくも、嫌味を嫌味で返す澪都、そして早くも紅龍を鞘から抜いて構える。
「あら?気に障ったのならゴメンナサイね。私は私が欲しい物にしか手を出さない主義なの。だから、私は貴方を欲しいんだけど………。」
「全っ力でお断り致します!!?」
澪都は本気でフラウロスの言葉を遮った。
何と言うか、フラウロスには相当、対応が悪い澪都である。
「そう………なら、残念ね。」
急にフラウロスの声のトーンが変わった。そして周りの空気も一瞬で凍り付いた。
空に向けて、指をパチンと鳴らした瞬間、空には百を越える悪霊の姿が現れた。
さらに、その悪霊が姿を変形させて、百を越える黒い槍となったのだ。
「へぇ、形状変化の能力か、そう言えばアンタの能力だったな。」
「黒き槍に穿たれて、死になさい!!?」
最初のコメントを投稿しよう!