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「まぁ、貴方がそこまで言うのでしたら、仕方ありませんね。」
何とか、納得してもらい澪都も肩の荷が降りたのだ。
フレイヤ本人は早速ロンドンに向かったようだ。
こうして澪都の家に久しぶりの平穏が来たのだ。
「ふうっ、これにて嵐も去った事だし、ちょっと、眠………く………。」
澪都は静かに瞼を閉じた。
慌ただしい時間が終わり、一時の休息に入った。
「ゼロ様、居るのですか?」
部屋に入って来た茜は、ソファーでグッスリと眠っている澪都を発見した。
起こさぬように忍び足で近付き、毛布を掛けると、不意に頬が緩んだように見えた。
無邪気な寝顔、何も拒む事なく、迷いも解決して澪都は答えの道を見つけた。
その道の先に居るのは私では無い事を知っているのに悲しみは無かった。
「だって、茜はゼロ様も凛さんも好きなんだから………。」
呟いた言葉、それは眠っている澪都の頭の中に鮮明に残された。
「………茜、俺、眠ってたのか?」
何かの気配を感じたのか澪都はゆっくりと瞼を開けた。ボンヤリとした視界の中には茜の顔が見える。
「はい。少しだけですけど………。」
「そっか………悪い。お詫びに何か料理でも作るよ。」
澪都はそう言うと台所に向かっていった。
少し眠って体力を回復したからなのか、包丁を持つ手は安定していた。
その技術を隣で見学する。確かに茜も料理をするが、澪都のように和洋中までは出来ない。
澪都も追い抜かれないように陰ながら努力をしていたらしい。
テーブルに並べられた和食を食べながら、ふと呟いた。
「何だろな………慌ただしい連中が居ないのも淋しいもんだな。」
いつものメンバーが居ない事に少し寂しさを感じた澪都は、左手に意識を集中させた。
「何をするのですか、ゼロ様?」
「ん~、夜の散歩………行ってみないか?」
明らかに何かを企んでいる澪都、まぁ、それも面白いから良いのだが、嫌な予感もする。
「やっぱり、皆と一緒の方が良いだろ。それは茜も同じだろうに………。」
夕飯が終わってから、澪都の家に結界を発動させる。これで泥棒が入る事も無い。
「さてと、始めるか。」
左手を前に出し、いつもの言葉。
「生成、開始。」
今回は少し違った物を作り出す。しかも、細かく精密に生成する。
「ゼロ様、これは?」
目の前にあるのは漆黒のバイク、精巧に造り出されているが、これもイメージのみで生成した物である。
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