FAIRY LAND SS

50/63
前へ
/274ページ
次へ
「―――Fairy star―――。」 周りを魔法印が包み込む。 最初からこれが目的だった。どんなに澪都が特化した生成魔法を使えたとしても、身を滅ぼす禁術を使っても、雪野と凛には勝つ事は出来ない。 あの二人は澪都が認めてしまう程に強くなっている。最初から使えていた澪都に比べて、その差は大きかった。 限界を知り、そこで止まってしまった者と………。 限界を知っても、前に進み続けた者との違い………。 雪野や凛は後者である。そして澪都は前者、だから、あの二人を倒すのではなく、動きを封じるだけなら出来ると確信していた。 逃げ回っているだけでは戦況は不利になっていく。それでも澪都は魔法印を描いていた。 「澪都様!!?」 「澪都!!?」 微かに声が聞こえる。だが、その声に集中力を乱す訳にはいかない。ETERNITY BRAKE WORLD(全てを破壊せし永久なる世界)の効果で魔法印を描く事は簡単だ。 問題はその反動を今の澪都が受け止められるか、どうかだ。 Fairy starは物質を《再構築》もしくは《元に戻す》などの能力がある。 ダミーの二人に能力を集中させ、足の部分を再構築すれば、時間は稼げる。 だが………。 『言うは易し、行うは難し』 澪都の身体に代償が無いとは言えない。最悪の場合は澪都自身も………。 「それに、命懸けで戦っているアイツ等を俺が守らなくてどうする!!?」 志は一つ、皆を助ける為、澪都が禁術を使う理由はそれただ一つの理由だけだ。 朱の世界に白の光が加わる。 翳す左手は血が逆流し、両足は上手く踏ん張る事が出来ず、右腕に至っては使い物にならない。 それでも、いくら自分に才能が無いからと言って………。 「負けられないんだ!!?」 全ての痛みを忘れた。 全ての意味を忘れた。 全ての感覚を忘れた。 全ての感情を忘れた。 そして、たった一つだけの目的だけは覚えていた。 「………俺が二人を守る!!?」 交わるように白銀の光が織り成す世界を遮断する。 「澪都様!!?」 「澪都!!?」 やっと聞こえた大切な人達の声、霞んだ眼で確かな敵を写す。 チャンスは刹那、それを逃せば次は無い。故に最後の一手は死ぬ気で放つ。弓を片手に超光速の矢とする槍。 「ロンギヌス・グングニル!!?」 それは澪都の知識の中で最強の名に相応しい神話の魔槍、それを矢として、ダミーに隙を作らせる。
/274ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2552人が本棚に入れています
本棚に追加