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ここは地獄か?天国か?と聞いたら天国だと答えるだろうな。
だが、それは間違いだ。
アイツ等の目的は澪都のみである。そんな状態から逃げられないと悟り、次第に抵抗力が………。
「待て待て待て待て!!?これ以上は俺の理性が保てなくなるって!!?」
まぁ、澪都の必死の反論も聞く者は誰も居ず、両腕両足を拘束してくる。そして、目の前には春澪がいる。
やはり、その目はトロンとしていた。春澪の後ろを見ると納得。空になっている大吟醸やビール瓶が転がっている。
しかし、四日目と言う事もあり、転がっている瓶の山も半端じゃない。
「お~い、温泉の準備が出来たぞぉ~。」
聞こえて来たのは那々樹の声、地獄に仏とはまさにこの状態である。
澪都は拘束を振り切って、替えの浴衣を抱えると、温泉へと向かっていった。
「……………フフッ。」
一瞬、背後で不気味な笑みを零していた雪野達、それに尋常ではない寒気を感じながら、澪都の歩みは気付くと早足になっていた。
「ふぅ………生き返るわぁ~。」
のんびりと温泉に浸かる澪都、不意に首筋を触れると、血を吸われた傷がいくつもある。
これは、明日の朝は起きるのが辛いだろうなぁと、自問自答しながら、雪野達との思い出を振り返る。
「あぁ、そう言えば茜の温泉に行った時も………。」
ちょっと待て?
ちょっと待て!?
嫌な気がするのは気のせいか?
茜の温泉でも、このような事があったような………。
そして、澪都の意識は脱水所に向けられた。動く人影は無い………が、そこまで心配する必要も無い。
今は貸し切りだし、今の時間帯は男性専用だった筈だ。
心配要らない、心配要らない。
温泉の壁に掛けられている札を見ると………。
《男女、混浴可》
誰の仕業だ。
ってか、一人しかいない。
危険と判断し、早めに温泉を出ようとして、入口を開けると………。
「……………フフフッ。」
不気味な笑みをしながら、雪野達が獲物を狩る目で見ていた。
あぁ、さらば我が人生、悔いばかり残るが、この状態から逃げる事は例え神でも無理であろうな。
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