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星空を眺めながら、澪都は笑った。
「………確か、あの時もこんな星空を二人で眺めていたな。春澪?」
澪都の後ろには浴衣姿の春澪が居た。数少ない、澪都の過去を知っている人物、そして、影で澪都を助けた暗殺者、言うなれば後輩のような存在である。
同じ暗殺者。
同じ創られた命。
ホムンクルス。
数々の境地を共に歩んで来た深い絆。
そして、いつしか憎しみが変わり、芽生えた幼い時の恋心。
「なぁ~んだ、気付いていたんですか。澪都さん?」
春澪は笑い、下駄をカランコロンと鳴らしながら歩み寄ってくる。
「当たり前だ。気配を消してても、それくらいなら分かるさ。春澪の匂いは前から変わっていないからな。」
春澪の匂い………それは何と言うか子供っぽい匂いである。
つまり今も………。
「子供って事ですか?ふぅ、私もまだまだですね。でも、いつか必ず澪都さんを綺麗になった僕で振り向かせてあげますからね!?」
むんっ、と意気込む春澪に澪都は大人っぽい笑みを零して………。
「それじゃ、楽しみにしてるさ。」
と、簡単に告げた。
前に比べると、より対応が大人になったと言うか、少し大人の色気が出て来たのか、話す時に胸がドキドキする事がある春澪。
「はい!?澪都さんも私が大人になるまでに結婚してたらダメですよ?」
そこまで言いますか?
ってか、結婚なんて考えてなかったな。ここにいるメンバーの誰かか、もしくは他の………。
「まぁ、誰と結婚するかなんて先の事だし、分かんないよ………でも、春澪がもう少し大人になったら考えてやるさ。」
澪都は春澪の額を人差し指でツンッ、と突くと笑いながら旅館に戻ろうとする。
しかし、すれ違う澪都の服の裾を春澪が軽く掴んだ。
「待ってよ………。」
小声で聞き辛かったが、確かに言っていた。
それを澪都は優しく聞き返す。
「どうした………?」
その言葉に反応した春澪が小声ながらも言葉を綴る。
「僕だって勇気を出して言ったんだよ?なら、澪都さんも真剣に答えてよ………恥ずかしいじゃんかぁ………。」
下に俯き、頬を赤く染めながら春澪は確かに言った。
それを聞いた澪都は軽く鼻で笑い、春澪の頭を撫でながら伝えた。
「そっか………ありがとな。春澪。まぁ、確かに俺の気持ちは決まってないし、誰かの押しに流されてしまうかも知れない。でも、やっぱり俺には春澪が一番大切な存在だ。ずっと一緒に居ても構わないくらいに………これじゃ不満か?」
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