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幼少の時に比べたら、暗殺者の時の方が心が穏やかだった。
人の命を奪う事に慣れ過ぎてしまったのだろう。
本来ならば、幾万もの任務を遂行して、いずれは任務で失敗して死ぬか、寿命で死ぬ。
それでも構わないと思っていた。
春澪に会うまでは………そこから自分で欠落させていた感情が溢れ出て来たのだ。
「信頼出来ない………って、澪都さんは僕達を信じられないの?秘密を話してくれないのですか!!?」
次第に春澪の声が大きくなる。
強く握り拳を作り、言葉を綴っていく。
「なら………自らの両親もこの手で殺したとしたら、どんな言葉を掛けられる?どんなに相談に乗ろうとしても、度を越えた事を相談されたら返答に困るだろ?それならば、誰にも相談せずに自分の中に秘めている方が良いだろう?」
澪都の言葉に春澪は声を詰まらせる。
「えっ、あ………で、も。」
「無理するなよ。春澪がもう少し大人になったら、相談するかも知れないからな。」
澪都は笑いながら、春澪の頭を撫でた。
優しい言葉、優しい掌、笑っている表情。それが今の澪都である。決して傷付ける言葉を吐く事はしない。
「澪都さん………。」
なら、少しでも心に安らぎを与えたいと思った春澪は澪都に歩み寄り、瞼を閉じて、小さな唇を澪都に向けた。
「……………ふぅ。」
澪都は溜め息を吐いた。
普通ならば、ここでキスをするのが当たり前なのだが、知っている気配が多過ぎる。
「いい加減に姿を現したらどうだ?いくらお前等でもプライバシーは尊重してくれると嬉しいのだが?」
しかし、動く気配は無い。
「……………ったく。」
澪都は春澪の肩に手を乗せると、思いきり跳躍した。
木々を突き抜け、夜空には二人の姿がある。
『追いますよ!?』
そして、隠れていた"何か"も跳躍してくるのだ。
それを待っていたとばかりに、先に空中に居る澪都は魔力を集束させる。
「行くぜぇ………澪都特製スーパービックリドッキリ蝿取り紙!!?」
魔力の分子を変換して、瞬間接着剤のような粘着性を持った広範囲の膜、それは隠れていた"何か"もとい、雪野達を捕獲した。
「なっ!!?澪都様………何て事をするのですか!!?」
あぁ、怒ってる。
雪野さんが般若のように怒っている。
その背後では不気味な笑いをしている鬼神=凛が見ている。(睨んでいる)
「さてと、これで平和になったな。んじゃ、旅館に戻るか?」
「はい!?大好きです、澪都様。」
春澪の柔らかな唇が頬に触れた。
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