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た、助かった………心の底から安心して、声のした方を向いたら。
「一閃!?」
安心したのが間違いだった。
アイツ等は俺だけを助けるなんて器用な事は出来ないんだっけ。
轟音と共に光が二人を包み込んだ。
白煙を撒き散らして、澪都の目の前には凛と雪野が立っていた。
懐かしく感じる巫女装束に大きめの薙刀、そして雪野は魔力を秘めた材質で編まれた黒装束だった。
「凛さん、雪野さん。いくらなんでも手加減をしなきゃ、街が火の海になってしまいますよ。」
春澪が助言をする。
それなのに、澪都が左手首に違和感を感じて視線を落とした。
「……………春澪、これなんだ?」
左手首にあるのは………。
「えっ、これは僕と澪都さんを繋ぐ銀色の鎖だよ。」
満面の笑みで言ってくる春澪、それはどう見ても手錠だった。
しかも、魔力が込められており、春澪の解除が無い限り外す事は出来ない。
「いや………ってか、解除してくれないか?凛と雪野の視線が異常な程に怖いんだが?」
目の前には鬼神と般若が立っている。
その殺気が恐ろしく、逃げ出したいのに春澪が腕に抱き着いて離してくれなかった。
「澪都様、良いですねぇ。春澪ちゃんに抱き着かれて。」
「まったく………見ないと思ったら、このような場所で………なぁ。」
「ダメですよ。澪都さんは僕と一緒に居るんです。お二人には絶対に渡しませ~ん!!?」
駄々っ子か、アンタ等は?
両腕を引っ張られながら、呆れ果ててる澪都。
そして………。
「はぁ………いい加減にしろよ。お前等………。」
冷たい言葉、それで終わった。
駄々っ子の三人は親に怒られたように肩を狭くした。
そして、澪都の腕を離すと少し距離を置いた。
冷たかった澪都の表情が次第に和らぐと、いつものような笑顔に戻った。
「俺は誰の物でも無いよ。俺を手に入れる事が出来る人は本当に俺を愛する人が現れた時だ。それが春澪達なのかは分からないけど、まだ先の事だ。とにかく今は皆と楽しくやっていきたい。だからさ、そんなに急がなくたって良いんじゃないかな?」
その言葉に三人は納得してしまった。
誰も澪都の考えを否定する事は出来ない。その考えは澪都の意志である。
だから、分かりやすかった。
それが澪都らしいと………。
澪都の気持ちが伝わったのか三人にも笑みが零れた。
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