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腑:
はら。正しくは「はらわた」。ここでの読みは「はら」とし、「心」への比喩的転回はないものとする。
胃腸等の消化器を始め内部が空洞になった内臓を指すが、句想文脈上特に「胃の腑(いのふ)」を念頭とすべきであろう。
へ:
与格の連体格助詞。動作の方向・対象・目標を表す。厳密な弁別ではないが、同じく動作の方向等を表す与格格助詞「に」に比較して動作の運動性をより動的に表す、とされることが多く、この句ではこの解釈を積極的に採用。
非定形:
この句もまた、定形に纏めることが可能であり、非定形・定形の双方に特有の情趣がある。
非定形で詠むならば、散文のリズムそのままに、悠々閑々としているようでありながらしかし能動的躍動的に、飲食(もしくは貪食か)の歓喜を詠い上げる句となる。
定形で詠むならば、中句から下句に詩の技法で謂う「アンジャンブマン(仏:enjambement、跨がること)」が生じ、即ち行末以前に文節の区切りが生じて意味内容が次の行へと「跨がり」、一般的散文の詠唱と異なる変則的なリズムを成す。結果「潮」に乗って「泳ぐ」様が中句に集中して表され、牡蠣の躍動性は増し、飲食の感慨は非定形より淡泊なものとなって下句に表れる。
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