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「酷い臭い、まさかここ…」
と言って、リノンは手で鼻と口を抑えた。
「収容所から汚物が垂れ流しになっているようだな」
「えぇ…」
「気にするな、ここを通っらなければ潜入できない、俺が先行する」
グランは暗視ゴーグルをつけ先へ進んで行った。
「ちょっと、まだ心の準備が…あぁもう!」
リノンは仕方なく、腕に巻いていた烈士の赤い腕章をほどいてマスクがわりに口に巻いてグランのあとを追った、足場が悪く水路の底はヘドロがたまって歩くたびに足にまとわりついてくる。
グランは時より止まり辺りを警戒しながら進んでいく。
「臭いっ…」
「ここだ、ここを登れば収容所の制御室の近くにあがる」
「本当は軍に入ったら、過去の人の生き方を知るための研究をしたかった…こんな最悪な、モノにまみれるなんて、なんでこんなことに?」
「俺が本部に要請したんだ、俺なりにブラックスペル対策として…人間味がある、銃を扱える人間をチームにと」
「はぁ?なにそれ?いい迷惑だよ…」
と言って、リノンはゆっくりとフードをとって、前髪が掛かった大きなグレーの瞳をグランに向けた。
「わたしはあなたとは違う、愛国者じゃない……」
グランは、その澄んだ瞳を見て。
「それでもお前は"烈士"だ」と言って、梯子を上がっていく。
リノンも渋々あとに続いて梯子に手をかけた。
梯子をあがるとまっすぐな通路にでた、通路には等間隔に扉が設けられており、扉にはそれぞれ番号がふってある。
つまり、扉のなかは収容所の罪人達を閉じ込める牢獄なのだ。
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