第三章 救われきれないもの(3)

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―え?え? 相手の言葉に、健治はさらに混乱する。 健治がこれまで想い描いていたゲームマスターの所業。経済を意のままに操り経済によって人々を操る、それは自分の夢物語の世界だと思っていた。 でも実はゲームマスターは現実に居て、すでに俺たちの知らない所で活動している? 「君は、この世界が、経済が、既にゲームマスターによってコントロールされてることに気付かないのかい?」 考えたこともない。各国の政府ですら、経済の安定化というテーマに四苦八苦しているのが現状なのだ。 世界を股にかける一握りのグローバル企業。その企業に対し、様々な国が税制の優遇を約束し、自国へ呼び込もうとしている。 そう、今の世界では国ですら一企業の言うがままなのだ。誰もコントロールできないし、コントロールしていない。それが健治の目から見た世界経済の現状だった。 ―だから俺は、お金を集めゲームマスターになろうと思ってた。資本の力で世界をコントロールしようと思っていた。 それは、もっとも強いプレイヤーこそがゲームをコントロールできる、つまりゲームマスターになれると思ったからだ。だが篠原は、プレイヤーとゲームマスターとはまったくの別物だと言っている。 「君の集めているお金は、一体どこから出て来ていると思う?」 篠原は、唐突にそんな事を聞いてきた。 「どこ、って…そんなの決まってる。他のプレイヤー、株主が払ったお金だ。」 「それじゃ、その株主が稼いだお金はどこから来たんだろう?」 相手の意図がわからず、健治は戸惑う。 「そりゃ、どこからか稼いでくるだろうさ。そんなの、いろんなケースがありすぎて把握できないだろ?」 「君は、株式で稼いだ一部を税金として払っているよね?」 「そりゃそうだ。払わなきゃお縄になるからな。」 相変わらず何を言いたいのか解らない相手の問いに、健治はただチャットを返すしかなかった。 忌々しい税制。何だって俺が稼いだお金の何割もの金額を上納しなければならないのか。そんな思いだ。
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