第三章 救われきれないもの(3)

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―こんな奴が居るから、世の中は平和にならない。こんな奴がいるから、戦争が起こる。 悔しさは程なく怒りの感情に変わる。健治は、ゲーム画面の向こうにいる相手につかみかかりたい衝動に駆られる。 でも、何もできない。相手はどこの誰とも知れないのだ。 「…お前は、一体何者なんだ?」 絞り出すようにその言葉を打ち込む。 だが、その問いに対する返事はなかった。気が付くと、篠原と名乗った相手は既にオフ・ラインになっていた。 健治はキャラクター達が動きを止めたままのゲーム画面と、その左下で同じく動きを止めたチャット・ウィンドウを呆然と見つめていた。
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