第三章 救われきれないもの(3)

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―俺がこの世に生きる意味、それは確かに分からない。でも、それと「俺がやっている事に意味がない」っていう話は全くの別物だ。 俺がこの世に居なくてもいい、居ない方がいいって認めたら、生きていけないんだ。 だから俺は必死で生きる意味を探してる。学生時代には見つからなかった。会社員時代にも見つからなかった。 今ようやく「ゲームマスターになる」という目標を見つけ、その夢に向かって走ろうとしているんだ。 なのにコイツは、いともあっさりと、俺のやってることに意味がない、だと? ―お前は何様だ。じゃあお前には生きる意味があるって言うのか。他人のやることを批判できるほど立派な人間だって言うのか。 そんな想いが、健治に自己肯定のための書き込みを促す。 「俺はこの数年で100万を億にまで増やした。利益率で言えば、10,000パーセント超えだ。そこいらの企業に、政府にそんな事ができるか。俺よりも効率的に稼げるか。」 株式で稼ぐというのは、労働よりも遥かに効率がいい。おまけに、一人で稼げる額に制約もない。実務に対する労働なら、どうやっても時間か肉体のどちらかに限界が来る。一日は24時間しかないし体も一つしかない。 でも、オンラインの株式取引であればそんな制約はない。掛け金を10倍、100倍にすれば利益もそのまま10倍、100倍になって返ってくる。 「俺はまだまだ勝ち続ける。ここまでコツコツとやってきたが、これからは加速度的に稼ぎを増やしていく。」 自分に言い聞かせるように、健治はチャットの文字を積み重ねていく。 この世界で勝つ意味?そんなものが分かっていようがいまいがどうだっていい。ただ勝つことさえ考えていればいい。 「100万を億にできるってことは、億を100億、100億を1兆にすることだってできるって事だ。この世の中、兆を稼ぐ力があればどれほどの力が持てる?  言ってみれば、一人で、この国を代表する自動車会社なんかと同じ影響力を持てる。つまり世界をコントロールできるって事だ。違うか?」
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