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イリヤ王子が目の前にいる…。
貰った干し肉を齧りながら目の前の白金の王子をじっと見た。
「名前は? 」
「キリルです」
ぐぅ、と派手な腹の音を鳴らせばイリヤ王子が遠慮しないで笑い飛ばした。
「すまんな。飯までもう少し待て」
「……すみません…」
やっぱりイリヤ王子は優しい方だ。
「よく噛んで」
キリルはこくこくと頷きながらしゃぶるように干し肉を頬張る。
…さて、どうにかイリヤ王子の傍に来る事が出来たらしいが…これからどうしたらいいだろう?
「子供が一人なぜこんな所に?君はアストゥールの人間か? それともイン? 」
「いえ! ウルファです。…それに子供じゃないです。もう18ですから」
「18!? 」
嘘だろう? とイリヤ王子の目が言っている。これは嘘じゃない。
「本当です」
見た目が子供っぽく見られるのはキリルにはよくある事だった。いや、それもこうしてイリヤ王子を追いかけるために外に出て初めて知った事だったが。
「…親はもう死んでいません。薬師の真似事をずっとしてて…ここへも薬草を摘みにきて…夢中になって知らず知らず遠くまで…来ちゃって…あの…」
キリルはこくりと息を飲み込んだ。
嘘はつかない。でも本当の事を言う必要もない。
「イリヤ王子…あの…付き人に…して下さいませんか…? 」
「お前を? 」
イリヤ王子が目を丸くして瞠り、キリルを見た。
「あの…実は俺小さい時にイリヤ王子に助けられているんです…。イリヤ王子は覚えていないかもしれないかも…ですけど…」
「お前を…? 」
今度は怪訝そうな顔。でもこれも本当の事だ。
「俺がまだ多分三歳か四歳の頃…イリヤ王子がお付きの方達と市井に出られたときに俺が親の手を離して道の前を横切って…しまったらしいんですけど…警備の兵に斬られそうになったところを…イリヤ王子に助けられたって…」
「ん~? ……そんな事もあったかもしれないけど…赤毛の女の子なら助けた記憶はあるが…黒髪の男の子…もあったっけか…? 」
イリヤ王子の言葉にキリルがはっとした。
しまった! 今髪の色染めているんだった!
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