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こっそりイリヤ王子を助けられればそれが一番いいんだ。
「あの、俺の事見張っててもなんでもいいですから…だから…」
イリヤ王子の傍に…そうじゃないとイリヤ王子を助けられない。守れない。
「キリル、オレクの言う事は気にしなくていい」
イリヤ王子がキリルを見てのんびりとそう言ったが、あまりにも王子自身に危機感がなさすぎる。
「いえ! オレク様の言い分の方が最もです。イリヤ王子は危機感が薄すぎる !」
「………」
「普通はもっと警戒しないと! こんな見も知らないヤツが近づいてきてら危ないでしょう! 」
「………自分でそれを言う? 」
「だ、…って…。俺は勿論…違うけど…もし…があったら…」
「だからその時はその時で俺にはそんな運命だったんだろう、というだけな話だ。自分でいいと言った事に対して責任は自分で持つつもりだ」
どこか投げやりなイリヤ王子にキリルは泣きそうに顔を歪めた。
俺は助けたくて来たのに…。
「どうして…そんな事…」
言うのかな…とじわりと瞳が潤んだ。
「こらこら、何でキリルがそんな顔をする必要がある? 」
「だって…イリヤ王子がご自分の事どうでもいいような事言うから…」
キリルはくっと唇を引き締めて涙が零れるのを必死に我慢する。
「大きな目に涙溜めてうるうるさせて…」
はぁ、とイリヤ王子が溜息を吐き出し苦笑を零した。
「オレク? 」
「……分かりました。いいでしょう」
何が…?
まだ目が涙で潤んでいたが周りを見渡せば場の雰囲気が変わっていた。
「じゃあ王子にもしもがあった時には身代わりにでもなるつもりも? 」
オレク殿がキリルに確認するように聞いてきてキリルは力強く頷いた。
「勿論! さっきも言ったけど…俺にはもう何もないから…」
「こんな子供に守ってもらうつもりなぞない」
イリヤ王子がむっとしたように言う。
「じゃあさっきみたいな事は言わないで! 」
自分は身の危険を冒してでもイリヤ王子の為に来たのだ。
縋るようにイリヤ王子を見ればイリヤ王子がまた溜息を吐き出す。
「…努力はしよう」
オレク様が口角をきゅっと上げたのがキリルの目に入った。他の兵もキリルに対して好意的に見えた。
どうして…?
「だが、本当にキリルを信用したわけではないぞ? 」
オレク様の言葉にキリルは勿論ですと頷いた。
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