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ギラッと、翡翠の瞳が出雲を睨む。
「分かってるよ。もう余計なことは話さない。だからそんな剣呑な瞳で見ないでくれ」
フン、とそっぽを向き腕組みをする翡翠に出雲は嘆息した。
「ご覧の通り翡翠は琥珀君を護る守護者みたいな存在だ。そして、君を何故か嫌っている」
「? なぜですか?」
「ハハッ。それは追々分かることさ。そんなに気になるなら本人に訊けばいいさ」
そんなこと不可能に決まっている。
彼女を一瞥すると、完全にコミュニケーションを拒絶する態度を示しているのだ。
出雲は「さて」と言い、椅子に腰を降ろす。
「私たちはとある人物を追っている」
出雲の唐突な話に、蓮也は訝しんだ。
「そいつはね、人の心に入り込むのがうまくてね、中々用心深い奴なんだ。どこにでもいて、どこにもいない存在……」
「はあ……」
どうにも要領を得ない説明で、蓮也は曖昧に返事をした。
「そして翡翠と同じ吸血鬼であり、一条愛歌を操った張本人でもある」
「――ッ!?」
「私たちはそいつを追っている。そう〝ファントム〟をね……」
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