第二章三話

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 しかし、蓮也から愛歌に接触はしていない。  むしろコンタクトを取って接近してきたのは愛歌からだ。    もしかしたらファントムは自分を知っている者なのかもしれない。    だからこそ一条愛歌という身近な人物を操り、蓮也を殺させようとした。    ……だとしたら許せない。  このまま放置するには見過ごせない。    人の心を弄(もてあそ)び、愛歌を操った報いをファントムは受けるべきだ。    奥歯をギリッと鳴らし、ファントムと同一の存在である彼女を盗み見る。    東翡翠(あずまひすい)。    東琥珀のアバターである吸血鬼は、蓮也を敵視している。  その理由も不明だ。    だが翡翠の両眼はいまも蓮也を捉え離さない。  憎しみ――ではないが、明らかに怒気を孕(はら)んだ瞳で、蓮也を見据えている。 (ええい……! 俺が一体何をやったっていうんだよっ……!)    恨みがましい瞳で蓮也は翡翠を睨んだ。    睨み合うこと数秒。  先に目を逸らしたのは蓮也が先だった。    ……よりによって琥珀の容姿とあの高飛車な性格は最悪だ。
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