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皆一様に疑問を持っただろうが、誰も床に倒れた女生徒に駆け寄ろうとしない。
汚物にまみれた彼女と、唐突に起きた出来事の不気味さに、本能的な恐怖を抱いたのだろう。
シンとなった教室だったが、一人の女子――琥珀が駆け寄った。
「あ、東さん……触れないほうが……」
クラスメートの一人が言ったが、琥珀はキッと相手を睨む。
「クラスメートが倒れたのに何もしないなんて、そんなのおかしいわ!」
「――ッ!」
琥珀の言葉で皆、混乱から冷めた。
クラスメートの一人が「先生、呼んでくる!」と言って教室から出て行く。
琥珀は倒れた女子を介抱し、蓮也を手招きした。
「運ぶの手伝って」
「運ぶって、どこに?」
「そんなの保健室に決まってるでしょ? ほら早くして!」
翡翠――ではなく、琥珀に叱咤され蓮也は女生徒をおぶり、教室から出て行った。
蓮也は混乱の最中にあった。
だから気付く事が出来なかった。
一人の人間が、蓮也を睨んでいた事に。
蓮也は気付く事が出来なかった……。
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