第二章四話

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「昨日、私たちに襲いかかってきた連中のことよ。ファントムに洗脳されて自我を喪った人形たちの総称。  ……そう、一条愛歌のように早沙希美香もなってしまう」 「――ッ!?」    蓮也が絶句する。 〝ディパーテッド〟――眠れない死者たち。  吸血鬼の因子を植え込まれた自我のない哀れな亡者。    遅かれ早かれ、早沙希美香は確実に〝ディパーテッド〟になり、琥珀たちに襲いかかる運命にある。 「……なんとかならないのか?」    蓮也の問いに、琥珀は力無く首を振る。 「こうなったらどうしようもない。一度吸血鬼の血に侵された人間に、抗う術は無いの」 「アバターや、琥珀の力を使ってでも……か?」    蓮也の追いすがる目から、琥珀は顔を背けた。  これから口にすることは、残酷だ。 「……蓮也は一つ勘違いしてるから教えてあげる。アバターや、私の翡翠の力は被害者を助けられない。自分の身を護る力であり、ファントムを狩る力。  それ以上でもそれ以下でもない。蓮也が彼女を助けたい気持ちは解る。だけど、私たちの力は万能じゃないの」
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