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第二章一話
カッカッカッカ……。
黒板で教師がチョークを削る音を、蓮也はボォーっとして聞いていた。
欠伸をする女生徒。
ひそひそと教師に隠れながら会話をしたり、メールを打っているクラスメートに安堵を覚える。
いつも通りの光景。
蓮也が望んだ日常。
それが帰ってきた。
形を変えて……。
強い視線を感じ、目を向ける。
琥珀……いや、翡翠か。
翡翠が双眸を紅く染め上げ、蓮也を凝視していた。
蓮也は深い溜息を内心でつき、昨晩の出来事を振り返る…………
「コーヒーでよかったかな?」
コトッと、テーブルに珈琲の入ったマグカップを大神出雲は置いた。
蓮也はいま、とあるビルの一室にいる。
放課後、化物と化した愛歌に襲われた蓮也は、唐突に割って入った男と、琥珀に連れられてきていた。
琥珀は反対のようだったが、男の『もう蓮也君も巻き込まれてる。
状況を説明しなければ、もっと危ないことになる』と説得された。
『大神探偵事務所』
ビルの入り口に掲げてある看板に、そう書かれていたのを蓮也は見た。
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