1人が本棚に入れています
本棚に追加
背後に憑く姉を蓮也は振り向く。
相変わらずの無表情。
そこには怒りという感情は見当たらない。
円と睨み合う翡翠。
一触即発の雰囲気が漂う中、出雲が「そこまでだ」と割って入った。
「翡翠、キミは引き下がるんだ。蓮也君も動揺するな」
チッ、と舌打ちして翡翠は傲然と腕組みをした。
「彼女は君を殺したりはしない。琥珀君がそうはさせないはずだ。だから心を落ちつけるんだ。キミがしっかりしなければアバターは不用意に発動するぞ」
出雲に言われ、蓮也は深呼吸で心を落ちつける。
今もなお、苛烈な視線を向ける翡翠に、蓮也は出雲に「彼女は一体何なんですか?」と訊ねた。
「さっきも言っただろう? 翡翠は東琥珀のアバターだよ。琥珀君が『こちら側』の世界に足を踏み入れる結果となった間接的な原因。そして吸血鬼だ」
吸血、鬼……?
「吸血鬼って、あの……」
蓮也が言い淀む。
その単語は御伽話の世界だ。
誰かが作った架空の設定で、漫画や映画の世界の話だ。
「キミの言いたいことは解る。『吸血鬼なんておとぎ話の世界だ』と言いたいんだろう? だが、現実は違う。
東琥珀はアバター使いで、翡翠は吸血鬼だ。キミよりもずっと前からね」
最初のコメントを投稿しよう!