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琥珀たちに向けて言うと、彼女は「こんな軽薄な男と一緒にしないでよ」と言った。
蓮也はぽりぽりと、気まずそうに頬を掻いている。
「先生には分かんないと思うが、好きか嫌いかなんてあんま関係ないんだよ。そういうのは付き合った後に考えればいいんだ。現にこの学校は、少し前は女子校だったんだ。男だけじゃなくて、女子だってそういう事に興味あんだよ……」
竜二が一瞬下卑た目つきをする。
が、出雲はそれには追求しなかった。
不意にチャイムが鳴り響く。
――取り調べの時間は終わりだ。
犬飼竜二には、もう帰っていいよ、と告げた。
ナイフを引き抜き、彼を解放してあげる。
琥珀は遮っていた扉から退き、開けた。
出雲は、去っていく竜二の背中に声をかける。
「そうだ、竜二君。さっきキミが聞き耳を立ててたとき、僕たちの話は聞こえたかい?」
竜二は振り向き、首を振った。
「いや。壁越しだったから上手く聞き取れなかった。何か問題でもあるのか?」
「聞いてなかったらいいさ。さあ、授業に遅れるぞ。早く戻りたまえ」
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