第二章十四話

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第二章十四話

 ――深夜零時。    綺麗な月明かりの下、円城円は散歩していた。    記憶が曖昧な私。  アバターとなった自分。  護らなければいけない彼。  護らなければいけない何か。    円は思う。自らの存在を。    生と死の狭間で漂う私。    何の為に生きて、    何の為に死んだのか、    いまの円城円に、その理由は知れない。    それでも一つだけ解ってることがある。    ――円城蓮也を護ること。    たった一人の弟を護ること。    それは円がアバターとなって自覚している明確なこと。 『何から護る?』という問いかけには、 『何者からも護る』という答えになる。    だから。    だから円城円は出向く。    記憶が定かではない状態で、この地を管理する『管理者』のもとに。    ギィッと軋んだ音がする。    古びた扉を開け、円は教会に入った。    ――コンバンワ。    声をかけると、中にいた人物は目を剥いた。    戦慄し、恐怖し、    狼狽し、震撼した。    まるで亡霊でも目撃したように、言葉を消失していた。    幽鬼のように佇む彼女は、    石像のように佇む彼に接近する。    ガチガチと震える彼を、円は嗤った。    愉悦し、喜悦し、愉快で、快感だった。    円は銀の剣を振り上げる。
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