第二章十三話

1/6
前へ
/40ページ
次へ

第二章十三話

 机上に広がるドラッグを、出雲は手にとって眺めた。    仄かな緑色をした錠剤と、眼前に座る犬飼竜二を、出雲は交互に見る。 「これはどこで手に入れたんだい?」    出雲の質問に、竜二はうな垂れるだけで答えようとしない。    そこに見え隠れする感情は、罪悪感だ。    彼の背後には琥珀――翡翠の殺気が漂ってくる。    並々ならぬプレッシャーで、蓮也がいなければ間違いなく、彼女は竜二を殺すだろう。    その気配を察してるのか、竜二は小刻みに身体を震わせている。    蓮也は事の成り行きを見守る傍観者に徹しているようだった。    ――それもそうだろう。彼は何も知らない。知らされていない。自らの『家』のことを―― 「これを持っている――それは即ちキミは殺されてもいいということかな?」 「え?」    穏やかな物言いだが、物騒な言葉に竜二は面を上げた。 「……どういう意味だよ?」 「そのままの意味さ。キミはこのままだと間違いなく殺される。僕、琥珀君、円城君、少なくともキミは、この三人に殺されても文句を言えない立場にあるんだよ」
/40ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加