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ピッ____
通話終了の文字が液晶に映る
耳から端末を離した手はずるりと垂れ下がった
行かなきゃ
罪がそこには待っている
ぐるぐると思考が回る
「はぁ、はぁ……クソっ」
過呼吸と似たものが喉を圧迫した
いつからだろう。
自分がこんなに惨めになったのは。
胸が……痛い……
それでも、行かないと
僕は、償う必要がある
そうでしょ……?
「ーーーーさん」
********************************
「嫌ぁっ!離して!駿河さんっ……
駿河さんはどこなの!?」
エレベーターを登って出たすぐ目の前の病室からそのヒステリックな声は聞こえた。
『703号室』
涼子さん。
義理の母だった人だ。
その部屋から一人の看護師が出てきた。
「月神さん……!
いらっしゃったんですね!
さあ、中に入ってください」
言われるがままに入った。
ここまで来てしまえば入ることになるのは当然のことだけど。
「……」
「萩原さん、ほら息子さんですよ?」
彼女は僕を求めてはいない
求めているのは僕の父の方だ
看護師の悟すような言葉に涼子の動きは止まった。
いや違う。
動くもなにも、動けないのだ。
ベットに何個ものベルトがあり、
それで涼子の動きを塞いでいる
だが、それでも涼子は抗おうとする
見兼ねた時は今日のように僕へ連絡が来る
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