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ゴンッとスーツケースから飛び出してきたミリアナに、男は迷うことなく荷物を叩きつけた。足元を狙い頭を低くしていたミリアナはもろに頭部にくらい、目の前がチカチカと点滅する。
「…………チッ」
ミリアナは舌打ちすると、そのまま何もせずにゴロゴロと地面を転がる。最初の一撃がかわされた、心に動揺が生まれれば刃は鈍る。あえて距離をとり呼吸を整えた。相手の出方を見極め、そして目の前に大きな荷物が迫っていた。
男はゴロゴロと地面を転がる少女に間合いを詰める、姿勢が悪く、こちらを見ようとする隙を狙い荷物を叩き込む。相手は素早く、そして小柄だ。頭を打ったので動き始めは鈍るだろうが、すぐに回復する事を見越しての追撃だった。
ミリアナは目の前に迫った荷物を顔の間に両手を挟むことで防御と同時にその身軽さを利用し、男の荷物を踏み台にする、ナイフは口に加え、両手を荷物に引っ掛け、足技を食らわせる。履いていた靴から隠しナイフが飛び出し、男の顔を狙う、骨かなり固いためナイフが通りにくいが、通りやすい場所がある。眼球と喉、眼球に突き刺せばナイフは脳みそを抉り、首を切り裂けば動脈を切断する。視界を奪われそうになれば自然と身体を後ろにのけぞらせるだろう。ミリアナは咥えていたナイフを片手に持って、持つ確実に殺すには喉を狙う。姿勢を崩しながらも一撃を叩き込もうとしたが、
男は荷物を自ら捨てた、片手一本で身体を支えなおかつ、姿勢を崩そうとしたのに土台が崩れては、どうにもならない。荷物が地面とぶつかる。ミリアナは油断したと歯噛みすると同時に。男の鋭い膝蹴りを食らう、内臓が痛めつけられ、呼吸が止まりながら父親の言葉が思い浮かんだ。
『もしも戦闘で十秒以内に殺せなかった場合はすぐに逃げろ。お前はただでさえ、体格で劣ってるんだ。いくら小手先の技術で反撃しても、体格で押し切られちまう。だから、ミリアナ、お前は一撃で殺せるようになれ』
男に荷物で殴りつけられた瞬間、すぐに逃げ出すべきだった。この街はミリアナにとっては庭のような物、逃げ切るなり、罠を仕掛けて殺すなりいくらでも方法はあったのに、目の前の獲物に執着したがために慢心してしまった。痛む腹を押さえながらもミリアナは男を睨みつけた。男も負傷したのか、フードが破け、そこから鷹のタトゥーが見えたが、たいしたことはないだろう。フードが破けた程度だ。殺される。ミリアナ
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