第1章

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私たちは再度契約内容を訂正して契約締結する事を約束して、事務所を出た。 育児休暇もしくは休業の融通を利かしてもらうとなると スポンサーを得にくく、仕事依頼が減るために報酬も減ってしまう事のデメリットも説明された。 「ったく、危うく向こうに都合良く契約交わすところだったわ! オレはもう騙されない。 事務所ってーのは利己主義で、タレントなんて駒同然だからな。」 リューマは前の事務所で相当イヤな思いをしたらしい。 「というか、育児休暇ってどうゆう事?!本気なの?!」 「ミユキ、妊娠するでしょ?もうすぐ。 早く手を打っとかないと、イクメンなり損ねるからね。 ふふ………。」 ふふっってリューマ、一人でニヤニヤして、一体何考えてるの?! 「私、まだ妊娠してないし!」 「中出しバッチリしたから大丈夫じゃん♪」 リューマ、余裕の顔して鼻唄まで歌ってる。 「それに、秩父の神社で子孫繁栄のご祈願したしね♪」 肩をすぼめて笑顔でピースして見せる。 「まーあれから、ずーっとオアズケ食らってるから、確立は下がっていってるけど」 リューマとはまだシコリがとれなくて、体を重ねていない。 「ミユキ、オレは早く父親になって、我が子に愛情を注ぎたい。 オレたちの子、絶対可愛いよ」 そう言って私の顔を覗き込んだリューマの瞳は優しさで溢れていて、 胸が締めつけられた。 リューマの家庭は母子家庭の一人っ子だったから、きっと温かい家庭と理想の父親を夢見て固執するのかもしれない。 リューマの母親は再婚している。 「オムツ変えてあげたり、ご飯食べさせたり、言葉吹き込んだり………可愛いだろうなァ………」 空想するように 言葉に思いを馳せて言うリューマの横顔は、 幸せに溢れていて、美しかった。 「よし!用事も済んだし、アツシさんの店行こうか?」 「アツシさん?」 「緒方 アツシ」 「あっ、緒方トレーナー」 「そ。アツシさんの店行った事ないでしょ?」 「ない! 行ってみたい!緒方トレーナーにも会いたい。お世話になったから」
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