一難去って

2/13
前へ
/200ページ
次へ
もうしばらく亨さんを寝かせてあげようと、俺はコンビニに氷を買いに行くことにした。 ついでに何か食べるものも見繕って買ってこよう。 亨さんには優子先輩が作ってくれたお粥があるから、それに合わせる消化の良い物って言ったら何だろう。 茹で卵とか? いや、それっておかずにならないか。 そもそも茹で卵くらいなら自分で作れるし。 亨さんが食べられそうなもので、コンビニで売ってるものって何があるかな。 考えながらマンションを出ると、正面玄関に田中が立っていた。 「は? 田中? 何でここに?」 田中は俺の顔を見ると、手を振って大股で近づいてきた。 その手には、見覚えのあるスマートフォンが握られている。 「これ。車の中に落ちてたぞ」 そうだった、すっかり忘れて。 もしかしたらプラネタリウムに落としてきたかも知れないから、後で電話してみようと思ってたんだった。 「マジか! サンキュ!」 さっき気づいて、届けようとちょうどたった今来たところだと言う。 ナイスタイミングだ、田中。 あともう少し早かったら、チャイムを鳴らされても俺は居留守を使ったかもしれない。 「おまえ、朝と顔つきが全然違うぞ」 「え、そうか?」 「何だよ、いいことあったんなら俺にも教えろよ」
/200ページ

最初のコメントを投稿しよう!

259人が本棚に入れています
本棚に追加